写真家が綴る、ファインダー越しの飛鳥Ⅱ

写真家が綴る、ファインダー越しの飛鳥Ⅱ
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2022.10.27
「自分だけの船」の写し方のヒント
――How to take a picture of your own cruiseship

ここでは実際の船上撮影に役立つ、簡単で覚えやすいヒントを紹介しよう。ひとつでも覚えておけば、きっと次のクルーズが楽しくなるはずだ。

 

船上写真教室で筆者が最初に言うのは「どんなカメラでもOKです。スマホももちろん大丈夫」ということ。性能や、ダイヤルで数値を操作するような技術より、何をどう見ているかが大切です。

 

船が橋をくぐるとき、シャッターチャンスは「その瞬間」ではありません。見上げて橋の裏だけ写してもうまくはいかず、その15〜30分も前、優美な全景が見えているときのほうがいいのです。

 

大切なのは撮りたいものがどう見えるかを常に先読みしつつ動くこと。船首から船尾まで歩くと数分かかるし、行動には余裕を持って。船内を熟知していれば移動に無駄がなく、強風で屋外への扉が閉鎖されたときにも「ラウンジの窓から撮れるかも」などと、いい代案を思いつくものです。

 

また、シャッターチャンスには瞬発力が要ると思う方が少なくないですが、案外そうではありません。夕日は分かりきった時間に沈み、島影や陸地などの景色もけっこう長くそこにある。

 

むしろ「どう撮ろうかな、どう撮れるかな」と考えているか否かが大事。撮影は存外、いい「頭の体操」でもあるのです。

 

(上写真)入出港時の横浜ベイブリッジを額縁構図で写した例。ただ横に長いものを画面内に上手に収めるのは難しい。観光船の位置も計算づくだ

写真家が綴る ファインダー越しの飛鳥Ⅱ
こちらも入出港時の横浜ベイブリッジを額縁構図で写した例。橋脚がきちんと窓枠の間に来るよう、立ち位置を調整している
CRUISE GALLERY
写真家が綴る ファインダー越しの飛鳥Ⅱ
こちらも入出港時の横浜ベイブリッジを額縁構図で写した例。橋脚がきちんと窓枠の間に来るよう、立ち位置を調整している

<クルーズ撮影のヒント>

❶ 写真は「どこからどう見通すか」
テーブル越しのプールサイド、人物シルエットの向こうの夕日など、積極的に自分から「絵作り」をすると個性的な写真になる。

 

❷ 順光・逆光を意図して選ぶ
青空を青くしたいなら順光。逆光は、風景に明るさを合わせた場合はシルエット写真になり、露出操作で全体を明るくすれば、ふんわりと光に包まれたような作品になる。

 

❸ 船旅感を出すには額縁構図
もしも夕日だけを写したら、撮れた写真は乗船中かは分からない。本編で触れた通りに船の一部を画面に入れれば、クルーズの「気分」が一枚の写真として表現できる。

 

❹ 構図は主被写体を真ん中以外に
写真界で一般に言う「三分割法」が基本。メインの被写体は画面中央には置かず、どちらかに少し寄せて絵作りをするといい。

 

❺ 写真は引き算。広角レンズは要注意
コンパクトカメラもスマホも起動時はレンズが広角側。気にせず撮ると、どれもが「広すぎて漫然とした写真」になる。積極的にズームを操作して、意図するものを切り取りたい。

profile

高橋敦史〈たかはし・あつし〉
クルーズ写真家で旅行雑誌編集者。飛鳥Ⅱでは2014年の世界一周クルーズ以来、写真講師として国内外のロングクルーズに延べ400日以上同行してきた。陸上ではキャンピングカーを改装した「移動編集車」での取材も。その活動はトヨタ自動車公式サイトでも紹介されている。

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CRUISE2022年秋号に掲載
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