にっぽん丸が魅せる、新しき北の大地

にっぽん丸が魅せる、新しき北の大地
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2022.10.27
にっぽん丸で定番の人気を誇る「飛んでクルーズ北海道」。
乗船してみると、道内はもちろん全国から乗客が集っていた。
「効率の良さ」だけではない、このクルーズならではの魅力を探った。
写真=田村浩章 文=吉田絵里
利尻島を目指すにっぽん丸。『日本百名山』を記した作家の深田久弥は「島全体が一つの頂点に引きしぼられて天に向かっている。こんなみごとな海上の山は利尻岳だけ」と称賛したが、それも納得の光景だ

●知られざる絶景を見せてくれる

 

「涼しい!」。空港を出て一言目にそんな言葉がもれた。にっぽん丸で15年以上の歴史を誇る、定番人気のシリーズ「飛んでクルーズ北海道」。例年残暑シーズンである8月下旬から行われるこのクルーズは、夏の疲れを癒やす、いわば避暑クルーズでもある。

 

乗船地・小樽港を出た時は夜も更け始め、薄闇に和太鼓の情熱的な音が響く中での船出だった。そして翌朝目が覚めると、「そこは利尻富士だった」。そう言いたくなるような、富士山のように秀麗な形の利尻山がそびえたつようにして、にっぽん丸を迎えてくれた。港では島のゆるキャラである「りしりん」がぴょんぴょん飛びながら愛らしく歓迎してくれた。

 

今回のクルーズの寄港地はふたつ。最初の寄港地である利尻島は利尻礼文サロベツ国立公園の一部で、続く羅臼は世界自然遺産の地。どちらも大自然を誇るが、それだけにアクセスは決していいとは言えない。それがこのクルーズに参加すれば、3泊4日という短期間で、楽々めぐれる。寝ている間に移動ができるのは言わずもがな。乗客の中には杖をついた方もいたが、「船なら大丈夫だと思って、思い切って参加した」と語っていた。ちなみに日本船では引き続き乗船直前にPCR検査を実施、それも思い切って参加を後押しする力にもなっている。

●スムーズにユニークに旅できる

 

利尻島では島を一周するツアーに参加し、姫沼、オタトマリ沼という二大美沼を訪問した。その美しさはどこか外国のようで、同行のフォトグラファーと「このまま『スイスに行ってきました』と写真を見せても、きっとバレないですよね」と語り合った。知られざる絶景が、日本には数多くある。

 

さらにこの利尻山がユニークなのは、島のどこから見るかで景観が変わること。「利尻山十六景」の異名を持つ山で、なるほど島を一周する間にさまざまに異なる表情を見せてくれた。

 

利尻島に抱かれるようにして停泊するにっぽん丸。多くの乗客がこの完成度の高い光景をカメラに収めていた
CRUISE GALLERY
利尻島に抱かれるようにして停泊するにっぽん丸。多くの乗客がこの完成度の高い光景をカメラに収めていた

 

こうした自然美だけでなく、オタトマリ沼のそばの売店でこの地で養殖しているプリプリのホタテに舌鼓を打ったり、沓形の街中にある歴史ある建物で名産の海藻を使った作品づくり体験にいそしんだり。にっぽん丸の寄港地ツアーにはハイキングもあり、乗客の中には登山ルックに身を包んで参加した方も。とにかく決して交通網が発達しているとは言えない離島の見所を、スムーズにユニークに満喫できるところに、船旅の良さが凝縮されていた。

 

そういえば利尻島到着の前日、船内では「利尻島講座」が開かれていた。役場の方の軽快なトークの中には、「島にはコンビニが3軒あります!」という案内も。島を一周するツアーで、そのすべてのコンビニを通過したのは、なんだかスタンプラリーが完成したような、妙な達成感があった。こうしたちょっとした知識を教えてもらえるのも、にっぽん丸の船旅の楽しさのひとつだ。

 

かつてヒメマスを養殖したことからその名がついた姫沼
CRUISE GALLERY
かつてヒメマスを養殖したことからその名がついた姫沼
ホタテの養殖も盛ん
北海道銘菓「白い恋人」のパッケージにもなっているオタトマリ沼から望む利尻山
利尻昆布を筆頭に海藻類の採取が盛んな利尻島。島で最も古い建物は旧海産物問屋の兼上渡辺商店跡
兼上渡辺商店跡ではこだわりの内装が各所に。古くから利尻昆布は高価で、富をもたらした
兼上渡辺商店跡は「海藻の里利尻」となっており、海藻を使ったアート体験教室などができる
関連記事
TOPへ戻る
シェアアイコン