「ダイヤモンド・プリンセス」いよいよ復活、その目指すところは
プリンセス・クルーズ日本支社/堀川悟代表取締役社長インタビュー

実は「ダイヤモンド・プリンセス」では今年の日本発着から「メダリオン」というサービスを導入します。これは身につけられるメダル型のデバイスで、これと連動したアプリを使えば、各種レストランの予約など、さまざまなサービスを利用できます。船内サービスをIT化することで、お客さまや乗組員の手間を省け、サービスのレベルアップにもつながります。乗組員の確保には苦労もありますが、一方でIT化はそれを補ってくれるものだと考えて、積極的に導入しています。

 

さらにメダリオンは単にサービスをIT化するだけでなく、感染症対策にもなります。このデバイスを身につけていると客室のドアが自動的に開くなど、非接触のサービスも提供しています。船内施設の混雑具合もわかるため、密を避けることもできます。

 

実はメダリオンには位置情報を確認できる機能があり、船内でも例えば「お父さんはシガーバーにいる」などすぐに居場所がわかります。「ダイヤモンド・プリンセス」は大きな船ですから、家族がそれぞれで好きなことをして過ごす時にも便利です。

メダル型のデバイスは腕時計型などがあり、感染症対策にも役立つ

――そのほかの感染症対策はいかがでしょうか。

 

堀川 乗船するに当たって利用するアプリに、名前や住所、緊急連絡先などを入力します。感染症を含めて、万一何かあったときにすぐ連絡がつくようにするためで、国からの要請もありました。以前の感染症発生時に、すぐに連絡先がわからなかったケースがあったため、その反省をいかしています。このアプリは日本語にも対応します。

 

感染拡大予防ガイドラインの策定に当たっては、国土交通省、厚生労働省など関係者の方々には非常にお世話になりました。ガイドラインがここまで迅速に策定できたのも、省庁間の協力があったからこそだと思っています。このガイドラインを元に、各社独自のプロトコルを策定します。何かあった時はそのプロトコルに基づいて動きます。

 

このガイドラインは国際的な基準にも基づいています。アメリカ疾病予防管理センター(CDC)や船会社の感染症対策の専門家などと協議を重ねて作ったものです。一時はロックダウンもしていて、厳しい感染症対策を行っていたオーストリアのものをベースに作っています。このガイドラインは船のお客さまや乗組員、さらには寄港地の住民を守るもので、なおかつ船会社がクルーズ客船をオペレーションし続けられるものになっています。

 

万が一船内で感染症が発生した場合には、船内で隔離を行います。感染者を下船させると寄港先の医療をひっ迫させる恐れもありますので、原則は船内隔離を行い、重症の方など状況を見て陸上の病院で治療を行います。万が一、船内の10パーセント以上の人が感染するなどの状況になった場合、医師の判断のもとでクルーズをキャンセルする可能性もあります。

 

専門家監修の消毒方法を採用するなど、積極的な感染症対策を実施している

――クルーズに関してネガティブなイメージを持った人もいたかと思いますが、そのあたりはどうお考えでしょうか。

 

堀川 厳しいご意見もありましたが、実際に乗られた方から応援のメッセージもたくさんも頂戴しました。良くも悪くも認知度はアップしたと思います。その中には「私も乗ってみたい」と思われる方もおられます。もちろん怖いと思う方もいらっしゃると思いますし、それは仕方ないことですが、やはり船は動かし続けて行こうと考えています。船だからこそできる体験をご提供しつつ、経済にも貢献していくことが大事です。

 

寄港予定のある各地の港湾の方も応援してくださり、自治体のトップの方から寄港要請を受けることもあります。やはり船が一度港に入ると、大きな経済効果がありますので。

 

日本発着クルーズにおいては、ワクチン3回接種が条件です。さらに乗船前3日以内に行われたPCR検査や簡易抗原検査の結果が陰性であることが必要です。新幹線や飛行機やホテルで、そこまで対応しているところはありません。クルーズは安心・安全だということをこれからも伝えていきたいです。

 

――いよいよこの春から日本発着が始まりますが、改めて今後の目標はありますか。

 

堀川 こんなに楽しいことがこの値段でかなうということを、多くの人に体験してもらいたいと思っています。クルーズはリピーター率が高く、多くの人が楽しめる旅のスタイルです。これをマーケットが証明してくれるまでは、日本発着はやめません。すでに2024年の予定もありますし、2024年までには日本のクルーズ人口もコロナ禍前に戻したい。プリンセス・クルーズとしても運航船をサイズアップすることを検討しつつ、日本発着クルーズを続けていければと思っています。

弊誌インタビューに応える堀川悟代表取締役社長。旅行業やリテール産業、レジャー産業において30年以上の経験を有し、2015年より現職。
CRUISE GALLERY

■プリンセス・クルーズ公式サイト

www.princesscruises.jp/

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