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にっぽん丸洋上のミュージカル劇場へ

 

舞台が回想シーンになると、トップスターのメアリー(壮一帆)とジョージが華やかなショーを繰り広げ、20年代のニューヨークが目の前に鮮やかに蘇っていた。続いて、連日満員だった劇場が時代の流れとともに客足が遠のいたことで、支配人フランクが他の劇場から呼んだ人気スターのロバート(福井晶一)が登場。メアリーとロバートの艶っぽく美しい歌とダンスにしばし魅了された。

 

話は進み、メアリーとロバートの活躍で劇場は大盛況。彼らに憧れてデイビット(荒田至法)とマーガレット(増田有華)の若手も入ってくる。これから劇場はますます盛り上がると思われていたが、世代交代の波に次第に不安を覚え劇場を去るメアリー。ロバート、デイビット、マーガレットも劇場を去ってしまう展開に。再び華やかなショーをすることを願い、メアリーの帰りを信じて待ち続けるジョージとフランク。再会を果たし、ステージに立ったメアリーだったが…。ラストのシーンは思わず心の中で「そうなるんだ…」と心を打たれ、メアリーの儚くも輝きに満ちたダンスと歌声がいつまでも頭の中をめぐっていた。

ジョージ役の玉野さんがタップを披露。圧巻のパフォーマンスだった
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ジョージ役の玉野さんがタップを披露。圧巻のパフォーマンスだった
メアリーとロバートの歌とダンスは大人のムードたっぷり
ロバートの新しいパートナーとしてマーガレットが抜擢
新しいショーを任されたデイビットとマーガレット
フランクとジョージが一緒に舞台をやろうとメアリーを誘うシーン
メアリーの不安な心の中を表現した演出は見ごたえがあった
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メアリーの不安な心の中を表現した演出は見ごたえがあった
舞台の終演後のカーテンコール。会場は大きな拍手に包まれた
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舞台の終演後のカーテンコール。会場は大きな拍手に包まれた

■出演者たちの素顔が垣間見えたアフタートークショー

 

上演後の余韻に浸ったまま、アフタートークショーに突入した。ファンにとっては出演者たちの話を直接聞くことができる、またとない企画に会場も待ち遠しい様子だった。

 

ステージにはショーを終えたばかりの出演者6名が温かい拍手で迎えられた。やり切ったという充実感と、いつもとは勝手が違うステージだったもののうまくいったというホッとした表情が見て取れた。トークショーではミュージカルの話はもちろん、昼間にデッキから富士山を見た話やグランドバスの体験談など、限られた時間だったがにっぽん丸クルーズそのものも楽しんだという、プライベートな時間の話も聞けた。

乗客も出演者も、にっぽん丸の美食を堪能した

 

また稽古場でのエピソードでは、福井さんが演じたロバートの登場シーンでメアリーに花を手渡すときの歌を、稽古場で『美女と野獣』を歌いながら登場していたという話がメアリー役の壮さんから飛び出した。すると壮さんが「ぜひみなさんにも…」と促してくださり、稽古場バージョンを再現。思いがけず福井さんの『美女と野獣』を聞くことができ、さらに乗客に花を手渡すという素敵なシーンも見ることができた。

 

終盤では、今回の作品の好きなシーンの話や、海外の港に寄港するクルーズに乗船してミュージカルを上演したいといった展望など、始めから終わりまで出演者の皆さんのチームワークとそれぞれの個性が際立つアフタートークショーとなった。

福井さんの『美女と野獣』に乗客たちはみな聞き入っていた
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福井さんの『美女と野獣』に乗客たちはみな聞き入っていた

出演者の皆さんからの挨拶の後、特別に記念撮影の時間が設けられた。このうれしいサプライズに会場が沸き、スマートフォンやカメラでの撮影会が始まった。

 

「最高です。こんな間近でミュージカルを見られることはまずないですから。臨場感に感動しました」「ストーリーも興味深く、とてもクオリティーが高かった。乗船してよかったです」と乗客の皆さんが目を輝かせながらミュージカルの感想を聞かせてくれた。

 

 

■洋上のミュージカルの舞台裏

 

今回、ミュージカル上演に先立ち、作品の演出・脚本を手がけた玉野和紀さんに船内でお話をうかがった。

 

「クルーズでのミュージカル上演は30数年ぶりです。今回お話をいただいたときは、クルーズ業界も活気が出てきたのだとうれしくて、何が協力できることがあればという気持ちでした」と玉野さん。しかし、ドルフィンホールのステージを下見したときは、舞台のスペースが狭く、段差が少なく、舞台袖がない…、場面転換もできないことからミュージカル上演は難しいのではないかと思ったという。

 

「今回、苦労したのはステージに物語の世界を創ることでした。ドルフィンホールはステージと客席の距離が近いので、ライブ感のあるショーには向いていますが、ミュージカルとなると舞台設定の時代をどう作り込めばよいのか悩みましたね」。

 

今回のストーリーでは、1920年代の劇場の舞台、事務所、楽屋、モーテルという最低限4つの場面がある。それらを表現するために中割幕を利用して、イスやテーブル、鏡台など最低限の小道具と出演者の芝居で世界観を作り上げていった。「パーテーションを使って舞台袖を作ったり、2階の一部も舞台として利用したり、使えるものはとにかく生かす方向で進めました」と玉野さん。

 

最後に「今回のミュージカル『THE THEATEAR』をご覧になった船客の皆さまが、ミュージカルって面白いなと思っていただければうれしいですね」と話してくれた。

オリジナルミュージカル『THE THEATEAR』の演出・脚本を手がけた玉野和紀さん
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オリジナルミュージカル『THE THEATEAR』の演出・脚本を手がけた玉野和紀さん
上演当日のリハーサル風景。音響や照明などスタッフと登場のタイミングなどを入念に確認していた

■にっぽん丸の企画力が光るクルーズに注目

 

にっぽん丸の企画力を発揮した今回の「にっぽん丸エンターテイメントクルーズ~ミュージカル~」。これ以降もにっぽん丸ならではの企画力がクルーズが用意されている。

 

9月23日~25日の「にっぽん丸スターライトクルーズ~青ヶ島周遊~」では、スポーツデッキで天体望遠鏡を使った星座鑑賞が開催される。さらにドルフィンホールで「にっぽん丸プラネタリウム」も実施予定だ。

 

12月19日~21日の「にっぽん丸Winter Wonderland~大塚国際美術館貸切コンサート~」では、にっぽん丸の乗客のためだけに大塚国際美術館を夜間貸切り、名画を鑑賞。システィーナ・ホールで弦楽四重奏のコンサートも楽しめる。

 

翌2024年もテーマクルーズが続々と登場する予定だ。1月6日~1月8日の「にっぽん丸新春のオペラクルーズ」では藤原歌劇団を迎え、G.ビゼーの名作『カルメン』が字幕付きで原語上演される。1月20日~23日の「船旅にっぽん丸~食の饗宴~」では、ソムリエ・田崎真也さんとにっぽん丸総料理長によるペアリングディナーが満喫できる。こうしたテーマクルーズは人気で、満船になる可能性もあるため、乗船を考えているなら早めに手配したい。

 

今回乗船した「ミュージカル」がテーマの船旅では、1日目は歌とピアノが織りなすミュージカルの名曲に耳を傾け、2日目はオリジナルミュージカルで歌、ダンス、お芝居を楽しんだ。ミュージカルへのアプローチを変えた夜のエンターテイメントショーに加え、トークショーや記念撮影といったファン心をくすぐる企画を存分に楽しんだにっぽん丸での2泊3日だった。

初日の夜は歌とピアノによるデュオコンサートを楽しんだ
2日目の夜はミュージカルの世界に浸った
ペンアイコン取材メモ

にっぽん丸エンターテイメントクルーズ~ミュージカル~

日程:2023年4月26日(水)~28日(金)

コース:横浜~(終日航海)~横浜

船名:にっぽん丸(商船三井客船)

総トン数:2万2472トン

乗客定員:449人(最大)/乗組員数:230人

https://www.nipponmaru.jp

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