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帰ってきたプリンセス
多様な人々と出会う楽しさ
●クルーも楽しむ船内イベント
これまでは感染症対策で多くの船内イベントが休止となっていたが、ようやく徐々に復活してきた。
シアターで開催された「料理の実演と厨房見学ツアー」では、総料理長のパオロさんが家庭でも作れるイタリア料理のレシピを教えてくれた。17歳のころからプリンセス・クルーズのギャレーで働いてきたというパオロさんと、同年代のメートルディー(給仕長)のジョンポールさんの掛け合いは、イタリア人らしい陽気さにあふれ、まるでプロのコントのよう。おなかがよじれるほど笑った。その後シアターを出て、急ぎ足だがギャレーを見学することもできた。
クルーショーも形を変えて復活した。ある日のプールデッキで開催されたのは「クルーの綱引き大会」。運航部や機関部、医療チームなどふだん乗客と接する機会の少ない部署の乗組員がそろいの衣装で登場し、部署対抗で競い合い、大いに盛り上がった。
アトリウムで開催された「インターナショナル料理パレード」では、ギャレーチーム数十人が笑顔で登場した。「皆さんが食べた食事のお皿を一日1万4000枚、洗い続けたのは彼らです!」と紹介されると、乗客から「サンキュー!」と拍手喝采が沸き起こった。うれしそうにはにかむ乗組員たち。「明日からはご自分で洗ってください!」の言葉に、また喝采が沸く。こういった交流は久しくなかったが、実にクルーズらしい光景だろう。
●3年半の気がかり
今回は日本人よりも、米国や東南アジアなど海外からの乗客のほうが多く、インターナショナル・クルーズらしい雰囲気を存分に楽しめた。ロサンゼルスやメキシコ、シンガポールから来たという乗客たちと交わす、毎日のちょっとした会話が楽しい。
「長男が大学に進学するから、家族旅行はこれが最後かな」「下船したら2週間、ベトナム旅行に行くよ」「神戸で食べたラーメンがおいしかった!」「日本文化を心からリスペクトしているの」
正直に言うとこの3年半のあいだ、クルーズに対するもやもやした気持ちが消えることはなかった。2020年2月の出来事は、ダイヤモンド・プリンセスの名とともに世間から忘れられることはないだろう。
そして私自身、ずっと気になっていたことがあった。「再びこの船に乗ったとき、自分は心からクルーズを楽しめるだろうか」と。だが、それは杞憂だった。
さまざまな国の人たちが一緒に飲み食べ、おしゃべりをして、時に一緒に踊る──。そんな多国籍の交流こそ、クルーズの一番の楽しさではなかったか。パンデミックを経ても、そのことに何ら変わりはない。いままでも、そしてこれからも。今回あらためてそれを実感できたことが何よりうれしかった。
天神祭で華やぐ大阪と九州・韓国9日間
日程:2023年7月19日(水)~27日(木) ※取材は7月24日(月)~27日(木)
コース:横浜~長崎~済州島~神戸~大阪~横浜
クルーズ代金:13万(内側)~69万9000円(グランド・スイート)
船名:ダイヤモンド・プリンセス(プリンセス・クルーズ)
総トン数:11万5875トン
乗客定員:2,706人/乗組員数1,100人
取材協力:プリンセス・クルーズ