次世代を担う船を造ること――
「飛鳥Ⅲ」に携わる人たち、それぞれの想い
飛鳥Ⅲへの道【シリーズ第3弾】Report

次世代を担う船を造ること―― 「飛鳥Ⅲ」に携わる人たち、それぞれの想い 飛鳥Ⅲへの道【シリーズ第3弾】Report
CRUISE STORY
クルーズストーリー
2024.04.15
ドイツのマイヤー ベルフトで着々と建造されている「飛鳥Ⅲ」。
今日も数多くの人々がそれぞれの想いを胸に建造に携わっている。
それぞれの「飛鳥Ⅲ」にかける想いを聞く。
写真・文=吉田絵里

■ドイツにおける初めての日本船建造

 

ドイツのマイヤー ベルフトにて建造真っ最中の「飛鳥Ⅲ」。1月には船底中央部付近、船の運航に最も重要な機関室エリアのブロックがつながり、エンジンも搭載された。

 

2024年2月、川に浮かぶ飛鳥Ⅲの基礎となる船底部分

 

それに先だって2023年12月には、建造の第一歩となる「キール・レイイング セレモニー」が行われた。キール、日本語で竜骨と呼ばれる、いわば船の背骨部分が組み立てられるセレモニーだが、当日は驚くほど多数の関係者が見守っていた。現地に駐在している日本人のメンバーはもとより、日本からかけつけた郵船クルーズの面々、そしてドイツのマイヤー ベルフトの幹部のほか、周囲をぐるりと作業員が囲んだ。

作業員たちもセレモニーを見守った
CRUISE GALLERY
作業員たちもセレモニーを見守った

 

「これまで貨物船のキール・レイイングに立ち会ったことはありますが、クルーズ船は初めて。マイヤー ベルフトにとっても、初めて日本船を建造するとあって、注目が高いのかもしれません」と語るのは、現地サイトオフィスの所長を務める丸 元夫氏だ。

丸 元夫氏

 

これに対して、マイヤー ベルフトの広報活動を担当するフローリアン・フェイマン氏は「造船所ではクルーズ客船のキール・レイイング セレモニーを開催することはしばしばあります。けれど『飛鳥Ⅲ』ほど多くの人が見守ったセレモニーは初めてです。造船所で働く人々にとっても、初めての日本のクルーズ船の建造ということもあり、注目度は高いです」と語っていた。

フローリアン・フェイマン氏

 

もともと、「飛鳥Ⅲ」の建造契約が結ばれたのが、コロナ禍の真っただ中だった。契約を締結するまで、そして締結した後も、日本とドイツをオンラインで結び、何度もコミュニケーションを重ねてきたという。

 

フェイマン氏は言う。「その間、お互いの考えを知るための議論が数多くありました。クルーズ船はどの船もそれぞれ特別な面がありますが、『飛鳥Ⅲ』においてはどこが特別なのか、何度も会話を重ねています。本格的に建造が始まる時点で、郵船クルーズとわれわれマイヤー ベルフトはしっかりしたチームワークがすでにできていました」。

 

■より快適度が増す、期待の空間

 

マイヤー ベルフトにサイトオフィスが開設されたのは2023年5月のこと。それにあわせて日本から駐在員としてドイツに渡ったメンバーがいる。最初は数人だったのだが、徐々にその数は増えており、「それまでの段階は、設計図上で詳細を詰めていく作業が中心だったものが、具体的な建造段階になるにつれ、携わる人々も増えてきました。さらに身が引き締まる思いがしてきましたね」とサイトオフィスの責任者である丸氏は語る。

 

そのうちの一人が、2023年11月より駐在している水村 和弘氏だ。主に乗客が過ごす公室、客室エリアの施設の監督業務を担当する。水村氏は2011年に郵船クルーズに入社して以来、レセプションのアシスタントパーサーやヘッドウエイター、ショップマネージャーといった職を経てきた。いわば第一線で乗客に接してきたからこそ、乗客に寄り添う気持ちは一層強い。「飛鳥Ⅲ」の建造においては、細かいインテリアなどを現場で決めていくなかで、「現場の声」を届ける役目を担っている。

水村 和弘氏

「施設も大事ですが、一番大事なのは、そこでどんなサービスを提供できるかだと思っています。どうしたらお客さまがストレスなく過ごせるか、居心地がいいのかと考え、提案をしています。例えばダイニングでは、お客さまのスムーズな動線になっているのかなど検討を重ねてきました。『飛鳥Ⅲ』ではぜひ、この船でしかできない体験をご提供できればと思っています」。

 

そんな水村氏がぜひ期待していてほしいと語るスペースがある。「ダイニングやラウンジなど公共のスペースはもちろん、『飛鳥Ⅲ』では客室も楽しみにしてほしいです。居心地の良さを追求した客室で、長いクルーズでもゆったりくつろげる空間になると思います。客室での楽しみも増やしていきます」。

 

客室でのんびり映画を見たり、音楽を楽しんだり。加えて飛鳥Ⅲでは全室バルコニー付きだから、自室バルコニーから海から昇る朝日や沈む夕日を眺めるなど、クルーズならではの醍醐味も堪能したい。

 

■建造前に日本を訪問、盛り込まれた「風呂文化」

 

現場を仕切るマイヤー ベルフトの面々も「飛鳥Ⅲ」にはそれぞれ思い入れがあるという。このプロジェクトの責任者を務めるアルトゥ・コルペラ氏は、「飛鳥Ⅲ」の建造がマイヤー ベルフトで行うことが決まった後、日本に来て、日本文化を知るところから始めた。

 

アルトゥ・コルペラ氏

 

「コロナ禍でしたが、日本を訪れ、『飛鳥Ⅲ』のベースとなる『飛鳥Ⅱ』をしっかり見て、研究しました。『飛鳥Ⅱ』は日本の文化とおもてなしの心が生きる、日本らしいクルーズ客船です。船内施設はもちろん、日本らしいサービスを活かせる船にすることを目指しました」。

 

滞在時には日本の温泉施設も訪問。日本独自の「風呂文化」にも触れたという。ちなみに同氏はサウナ文化が広く根付くフィンランド出身。日本のお風呂にはサウナがついているのに親近感を覚えたという。

 

「その意味では『飛鳥Ⅲ』の大浴場や露天風呂にはぜひ期待してください。ほかの国のクルーズ船にはないものが『飛鳥Ⅲ』にはあります。私自身も露天風呂に入るのを楽しみにしています」。

サイトオフィスにはダルマも置かれていた

 

■継がれていく伝統と、新たなクルーズ文化の創造

 

今日も日々着々と建造が進められている「飛鳥Ⅲ」。造船所を見てみると、機械化が進んでいるとはいえ、職人的なスキルが要されるシーンは思った以上に多い。機械が勝手にクルーズ船を造り上げるわけではないのだ。

 

「飛鳥Ⅲ」は50個以上ものブロックが組み上げられて構造が造られるが、そもそもこのブロックは直線だけで構成されているわけではない。中には曲がったブロックもあり、その部分の溶接などは人の手で行われている。

 

船体構造及び船体艤装関連の監督を行うのが、小大塚 直樹氏だ。これらブロックを組み上げ、さらに大量の機器や部品が合わさって造られる「飛鳥Ⅲ」。だからこそひとつひとつの部品、そして作業品質の管理も非常に重要だ。

 

小大塚 直樹氏

「ブロックを検査する際は、例えば溶接部については水漏れが起こらないか、といった観点でひとつひとつチェックしていきます。超音波による検査など、機械を用いた手法も用いていますが、並行して目視して確認するという作業も行っています」。

 

「飛鳥Ⅲ」のブロックの一部はポーランドで造っている。小大塚氏は本格的な建造が始まる前に同国に長期で出張し、ブロックの建造管理を行うとともに、ブロックの構造自体やそこに据えられる部品類がきちんと品質を保っているか、確認する作業を行ってきた。

 

「ひとつひとつの部品の品質、作業品質が保たれていることが、『飛鳥Ⅲ』を良い船に仕上げるために重要です。お客さまに安全・快適にクルーズをお楽しみいただくため、気が抜けないですね」。

湾曲したブロック

 

皆の期待を一身に背負った「飛鳥Ⅲ」。これまでに名だたる作家の作品が展示されることが発表されているほか、船内に飾られるアート作品が公募されることも話題になった。

 

郵船クルーズの遠藤 弘之代表取締役社長は着々と建造が進む「飛鳥Ⅲ」について、力強く語る。「『飛鳥Ⅲ』はわれわれにとって、30年以上ぶりの新造客船です。われわれも客船建造という新しい経験を日々していると感じています。『飛鳥Ⅲ』は日本の伝統を継ぐ客船だからこそ、日本的なものにこだわりを持っていきたい。『飛鳥Ⅲ』は日本のクルーズ文化を創っていきます」。

 

遠藤 弘之代表取締役社長

取材協力=郵船クルーズ

 

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本格的な建造の第一歩、キール・レイイング セレモニー

 

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