【特集】エクスプローラ ジャーニーが提案する
ラグジュアリーの進化系
スタイリッシュで高級ホテルのような広々とした空間で提案するのは、
この船「エクスプローラⅠ」でしか経験できない、スペシャルな体験。
進化するラグジュアリーを探りつつ、真の贅沢とは何かを考える船旅に出た。
非日常感あふれるラグジュアリーな空間
その名前からして、ずっと気になっていた。多くの船会社が「〇〇〇クルーズ」という名を持つなか、「エクスプローラ ジャーニー」という船社名からして、唯一無二の存在感を放つ。
それは単なるクルーズを提供するだけではない、船に乗って旅する経験、すなわち「ジャーニー」を提供するもの……船社名からもそんな強い思いが伝わってくる。
今回乗船したクルーズ船「エクスプローラⅠ」を運航するエクスプローラ ジャーニーは、地中海を拠点にするMSCグループが、満を持して運航を始めたラグジュアリーブランドだ。MSCグループといえば世界第一位の規模を誇る海運会社のクルーズ部門を担っており、日本発着を行う「MSCベリッシマ」は多くの日本人をクルーズに誘った立役者。そんなMSCグループが新たなクルーズラインを立ち上げたとあって、世界中で期待を寄せる人は少なくない。同船は6万トンサイズの中型で、乗客定員922人。船内のスペースを広々と確保、乗客一人当たりの乗務員の数を手厚くし、ラグジュアリーな市場に乗り込んでいった。
その独自性は、チェックインのときから感じられた。生花で飾られたテーブルで一人ずつ丁寧にチェックインの手続きをする。そこに行列は存在しない。そして船内に足を踏み入れると「ウェルカム・ア・ボード!」、ビシッと制服を着こなしたホストが、にこやかにウェルカムシャンパンを手渡してくれた。近くにフカフカのソファがあり、客室に入る前に、まずはソファで軽く一杯。そこは使い勝手のいい船内のカフェで、どこかホテルのラウンジのような雰囲気だ。
さらに奥に進むと天井までボトルが並んだ広い吹き抜けの「ロビーバー」があり、そのゆったりとした空間の使い方はまるで高級ホテルのエントランスロビーのよう。それも最近オープンしたばかりの、デザイン性の高いモダンなホテルにいる気分だ。
ロビーバーの脇には、高級ブランド店が並んでいた。洋上初出店というロレックス専門店では、日本では人気すぎて目にすることが少ないデイトナなどの人気モデルが店頭に平然と並んでいる。
その脇にはデスクが並び、ホストが待機する。大型客船ではしばしば人の行列ができるレセプションだが、ここは個々の乗客にじっくり向き合うコンシェルジュといった佇まい。実際、乗船中に何度か足を運んだが、待ち時間はまったくなかった。
エクスプローラ ジャーニーのコンセプトは、「Ocean State of Mind」、日本語に訳すならば、「海とのつながり、つながる心」とでも言おうか。「海からインスピレーションを得て、穏やかに、そして心豊かに旅を楽しんでいただけるサービスを提供しています」。エクスプローラ ジャーニーのセールス担当者はそう語り、にこやかに笑った。
荷物を置きにまず客室に入ったときの印象もやっぱり「陸のホテルのよう」。クルーズ船は限られたスペースゆえ、客室は陸のホテルと比べて往々にしてコンパクトなことが多い。けれどもエクスプローラⅠの客室は最低でも35平方メートルと、ホテルと比べても遜色ない広さ。ソファもゆったりしており、ファブリックなども上質で心地よく、誰もが居心地良く感じるはずだ。
ちなみにエクスプローラ ジャーニーでは客室のことを「キャビン」と呼ばず、「スイート」と呼ぶ。上質さをアピールするその言葉遣いからも、同社の哲学が感じられる。
ラグジュアリー船らしいと感じられたのが、客室のウォークインクローゼットだ。バスルームと隣接しているうえに、鏡台とイスも同じ空間にあった。そして鏡台の中には、最新鋭のダイソンのドライヤーがきっちりと収納されていた。すなわちシャワー→ドライヤー→着替え→メイクという一連の流れが、同じ空間でスムーズにできるのだ。特に女性は何かとおめかしする機会が多い船旅で、この客室の動線は秀逸だと感じた。
ちなみにこの船にはドレスコードはなく、タキシードやスーツ、そしてドレスは必要ない。それでもおしゃれな船内だけに、ディナー時はやっぱりおめかししたくなるし、実際上手におしゃれを楽しんでいる乗客ばかりだった。
プライベート感満載のリゾート
船内を歩いていて思うのが、とにかくスタイリッシュで洗練されているということ。そしてどの空間もゆったりとしており、混雑とは無縁だということ。
朝昼晩とお世話になるダイニングは、色使いはおさえられており、派手さはない。けれども上質なインテリアに包まれて、心地よい高級感に満たされている。
上部11デッキには屋根が開閉式となったプールデッキがあるが、吹き抜けの天井は高く、開放感いっぱい。真夏のクルーズでなかったせいもあるが、デッキチェアは余るほどあり、チェアが見つからずウロウロ……というシーンは皆無。そこはプライベート感満載のリゾートという雰囲気だ。この屋内プールに加え、同船には実に10カ所も水に親しめるエリアがある。カフェやダイニングなども大きな全面窓が多く、海と太陽を近くに感じられる空間が多い。
「エクスプローラ ジャーニーはヨットにインスパイアされています。誰もが自分のプライベート・ヨットにいるようにゆったりとくつろげる空間を提供しています」と語るのは、ディエゴ・ミケロッツィ船長。「そのうえで、弊社は環境にも最大限配慮しています。われわれは常に海や自然について考え、長くクルーズを持続していくために必要なことを実践しています」。
海のようにゆったりとした
ホストたちのサービス
こうした上質な空間を演出する立役者がホストたちだ。エクスプローラ ジャーニーでは彼らを「クルー」や「スタッフ」ではなく「ホスト」と呼ぶ。その名の通り、乗客をもてなすのが彼らの役目と明確に位置付けている。
エクスプローラⅠの船内に、焦っているホストはいない。グラスが空になりそうになると「お飲み物はいかがですか」と速やかに声がかかる。ナプキンが落ちればすぐさま拾ってくれるし、とにかく「人手が足りている」という印象だ。
「エクスプローラ ジャーニーのホストは、クルーズ船での勤務経験者のみならず、高級ホテルなどのホスピタリティー業界の経験者が数多くいます。多くの船会社では中間にエージェントが入ってクルーを派遣する形をとっていますが、エクスプローラ ジャーニーは直接雇用にこだわっています。自社で教育を行い、皆エクスプローラ ジャーニーのホストとしての哲学を学んでいます」と語るのは、ゼネラル・マネージャーのマーティン氏だ。
ちなみに今回のクルーズの乗船率は70パーセント程度。だからこそ船内空間もサービスもゆったりとしていた。セールス的にも、今後、乗船率100パーセントを目指すのが目標ではないという。さらにこれがもし100パーセントになった場合は、ホストの数を増やす場合もあるとのこと。
同社の哲学である「Ocean State of Mind(海とのつながり)」はすなわち、大海原のようなゆったりとしたサービス精神なのかもしれない──ホストたちと接していてそう思った。