飛鳥Ⅱで行く北の大地
道北の美景・美食を余すことなく
■全国各地から広がる新しい航路
「飛鳥Ⅱ」は近年、全国各地の港から発着するクルーズを増やしている。小樽を起点に稚内と留萌を訪ねた今回のクルーズも一例だ。北海道クルーズのハイライトを凝縮した内容に、フライ&クルーズの利便性が加わり、全国から乗客が集まった。一方で、道内からの参加者も多い。函館在住のご夫妻は「稚内は初めて。道民にとっても北海道は広いんです」と語り、この旅を心待ちにしていたという。
飛行機利用の参加者からは、新千歳空港と小樽港を結ぶ専用バスが好評だった。乗船バスの午前便は観光エリアで下車でき、散策中に荷物は港まで運ばれる。筆者は下船バスのみ利用し利便性を肌で感じたが、乗船時も使えばよかったと悔やんだ。空港には専用の荷物預かり所も設けられ、乗船前から細やかな心遣いが光った。


■クルーズ旅ならではの景色
出航時には、おたる潮太鼓保存会の打演が響き、観光客が近隣施設の屋上から手を振っていた。プロムナードデッキから手を振り返していると、「いい出港でしたね」と声をかけられ、不意に船旅の幕開けを実感する。
翌朝の早朝から岸壁には留萌市や周辺地域の特産品ブースが並び、ゆるキャラも姿を見せた。留萌港に飛鳥Ⅱが寄港するのはコロナ禍後初、実に8年ぶりとのこと。歓迎ムードに包まれながら、ツアーバスへと乗り込んだ。


■留萌から美瑛・富良野へ
2日目は美瑛・富良野をめぐる1日ツアーに参加した。留萌港から美瑛までは約2時間半。石狩川沿いを走る車窓からは畑が広がり、遠くに十勝岳連峰が連なる。車内で出会った女性は母と姉妹の三人連れ。「飛鳥Ⅱの寄港地ツアーはゆったりめぐれるから、高齢の母と一緒でも安心」と語り、その隣でお母さまもほほえんでいた。
最初に訪れた四季彩の丘は、美瑛を代表する景勝地。写真が飛鳥クルーズのパンフレットに採用されたことから、ここを目当てに参加した人も多かったようだ。約14ヘクタールの敷地には、季節ごとに配置を変える35万株の花々が咲き誇り、色彩の帯が現れると歓声が上がった。それらの花はすべて手作業で植えられているというから驚きだ。自由行動ではトラクターバスで園内をめぐり、ハート型の花畑や十勝岳を背景に記念撮影を楽しんだ。日差しは強かったが、気温が高くないので散策も快適。美瑛産牛乳を用いたラベンダーソフトクリームやお土産探しに、ゆったり満喫した。


次に訪れたのは、青い池。鮮やかな青色の水面に立ち枯れた木々が映り込む光景は神秘的で、この日も多くの観光客でにぎわっていた。この池は十勝岳の噴火後、火山泥流を防ぐ工事の副産物として生まれたという。天候によって青の濃淡が変わるとされるが、晴天に恵まれたこの日はひときわ鮮やかな青。「私たち、幸運よね」とツアー参加者同士でほめ合う姿もほほえましかった。混雑を避けられる撮影スポットを教えてもらえるのもツアーの利点だ。
その後、新富良野プリンスホテルで、北海道産食材をふんだんに使ったランチを楽しみ、道の駅に立ち寄って港へと戻った。絶景をめぐるだけでなく、北海道の広さを知るツアーだった。
夕刻、白い風車が夕焼けを背景に並ぶ中、留萌高校吹奏楽部の演奏に送られて船は出港した。岸壁から「また来てねー!」と手をふる子供たちの声に胸が熱くなる。


■楽しみが尽きない船内時間
その日の夕食には、留萌市から贈られたブランド米「ななつぼし」の白飯が供され、留萌の余韻を噛みしめた。
夜は、「ギャラクシーラウンジ」で今夏公開されたばかりの新作プロダクションショーを鑑賞。ビートルズをテーマにした舞台は、誰もが耳にしたことのある名曲と、70年代のファッションで時代を鮮やかに描き出した。タイトル通り、自然と一緒に「ツイスト&シャウト」するステージだった。
その後は「クラブ・スターズ」で、お酒を片手に語らう「クルートーク」に参加。エンターテインメント部門の若手スタッフ3名が登壇し、乗客からの質問に答える形で“ここだけの話”を披露した。ライフスタイルや、スタッフの視点から2025年7月に就航した「飛鳥Ⅲ」への思いも聞け、興味深い時間となった。締めくくりは「マリナーズクラブ」へ。シグネチャーカクテルを手に、リクエスト曲を奏でるピアノの音色に耳を傾けながら、夜が更けた。








