にっぽん丸で春を感じるクルーズへ
新しい気づきに満ちた、子連れ船旅

●ベストな季節にベストな地へ

 

今クルーズで寄港した和歌山は、「春旅」を冠したクルーズの通り、桜のピークを迎えていた。ベストなタイミングでベストな寄港地をめぐるという同船の方針が、最高の形で結実している。

 

参加した寄港地ツアーは、人気のローカル線「たま電車」に乗った後、いちご狩りに行くもの。船から列車に乗るというユニークな企画で、今回が初造成のツアーだという。たま電車は、日本で初めて猫が駅長になったことでも知られる和歌山電鐵貴志川線を走る列車だ。車両前面には猫の耳がついており、側面にもたくさんの三毛猫が描かれている。「可愛い!」と声を上げたくなる車両内外の装飾の数々に、約30分の乗車があっという間に経った。

愛らしいたま電車。ツアースタッフが親切に記念写真を撮ってくれた
CRUISE GALLERY
愛らしいたま電車。ツアースタッフが親切に記念写真を撮ってくれた
車内の完成度も高い
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車内の完成度も高い

たま電車を降りた後は、いちご狩りへ。訪れた鈴木農園では、広いハウスの中で複数のいちごが食べ比べできた。さらにテーブルとイスが用意されていて、座ってゆっくりいちごを味わるのもいい。ワンランク上のホスピタリティーを感じさせる農園だった。

童心に戻っていちご狩り
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童心に戻っていちご狩り

●伝統文化に触れる貴重な機会

 

このクルーズを選んだ理由のひとつに、無料の組み込みツアーがあった。希望者全員が和歌山城での能楽鑑賞に参加できるのだ。 本来なら子連れで能楽鑑賞は、少々ハードルが高く感じる。子供には早いか、落ち着いて楽しめるかなど、不安は尽きない。それでも「クルーズの組み込みツアーなら」と今回思い切って参加することにした。コロナ禍もあり、久しく夜祭りなどに出かけてなかった子供たちは、夜の外出というだけでウキウキしている。

 

和歌山城では桜まつりも行われていた。幻想的な夜桜も楽しめた
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和歌山城では桜まつりも行われていた。幻想的な夜桜も楽しめた

そこはロケーションからして完璧だった。入口には松明をイメージしたライトが灯され、この日だけ特別にブルーにライトアップされた和歌山城をバックに、にっぽん丸の乗客のためだけの舞台が設けられていたのだ。

 

いざ能楽がはじまると、「イヤーッ!」というかけ声と笛・小鼓・大鼓・太鼓の囃子の音に吸い込まれるように、皆ステージに釘付けになった。能面をつけて舞う姿は、まさに天女が空から舞い降りてきたよう。その気配は子供でも感じたようで、娘は「あのお姫様は空から飛んできたの?」とそっと耳打ちした。

 

自然の中に設けられた舞台も、能楽を彩った。闇夜の中、風に吹かれて背後の木々が揺れる光景は、どこか神々しい。途中、夜桜からハラハラと桜吹雪が舞い落ちてきて、その場の浮世離れした美しさに見入った。能を大成した世阿弥の時代にタイムスリップしたような、まさに幽玄の世界だった。 隣では引き続き、子供たちが食い入るように観ている。子供に能楽は早いかと危惧したことを反省した。子供が伝統文化に触れる貴重な機会を、にっぽん丸が与えてくれたことに感謝しつつ。

観世流能楽師・片山九郎右衛門らによる能楽を鑑賞した。演目は、「吉野天人」。「世界自閉症啓発デー」にちなみ、ブルーにライトアップされた和歌山城が背後にそびえる
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観世流能楽師・片山九郎右衛門らによる能楽を鑑賞した。演目は、「吉野天人」。「世界自閉症啓発デー」にちなみ、ブルーにライトアップされた和歌山城が背後にそびえる

●新しい発見に満ちた子連れ船旅

 

このクルーズには本来、英虞湾周遊も組み込まれていた。にっぽん丸から遊覧船に直接乗り移り、英虞湾を周遊するというものだ。珍しい企画でぜひ参加したかったが、あいにく海象が整わず、今回は見送りになった。

 

大人は残念に思ったが、子供たちはむしろ船で遊べる!と喜んだ。常に目の前を見ている子供と旅していると、何かと新しい視点になる。またもデッキで遊んだり、ビンゴに参加したりと最後まで満喫する。

 

にっぽん丸名物「南京玉すだれ」は大人も子供も大ウケ。ちょっと失敗するシーンなどが逆に盛り上がった
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にっぽん丸名物「南京玉すだれ」は大人も子供も大ウケ。ちょっと失敗するシーンなどが逆に盛り上がった
春日でゆったりとランチを楽しむ
デッキゴルフにも挑戦。子供の上達ぶりに感心する

 

「もっと乗ってたい!」とごねる子供たちの手をひいて、後ろ髪をひかれながら下船した。楽しくて、楽で、そして新しい気づきに満ちた、にっぽん丸の船旅だった。

 

ディナー前に着替え、ゆっくり食事を楽しむ時間も、ファミリーには貴重な時間だ
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ディナー前に着替え、ゆっくり食事を楽しむ時間も、ファミリーには貴重な時間だ

【取材メモ】
春旅にっぽん丸 ~和歌山・英虞湾周遊

日程:2023年4月1日(土)~4月4日(火)

コース:東京~和歌山~東京

クルーズ代金:15万円(スタンダードステート)~ 67万8000円(グランドスイート)

船名:にっぽん丸(商船三井客船)

総トン数:2万2472トン

乗客定員:449人(最大)/乗組員数:230人

https://www.nipponmaru.jp/

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