にっぽん丸モーリシャスプレシャスクルーズ
滞在型クルーズに見る新たなスタイルの可能性
海外最初の寄港地、シンガポールの入港日はクリスマスイブだった。近未来都市を思わせる街のいたる所が赤と緑に彩られている。1泊停泊だったためイルミネーションで輝くマリーナベイ・エリアを見て回ることができたのは幸せだった。
そしてクリスマス当日、日本を代表するテノール歌手、秋川雅史さんによるクリスマスコンサートがにっぽん丸の船上で開かれた。聖夜に相応しい楽曲が披露され、その透き通った美声がドルフィンホール全体を包み込んだ。その夜には特別なクリスマスディナーが供され、シンガポールのイルミネーションとともに華やかで忘れられないクリスマスを祝うことができた。
出港後は、マラッカ海峡を抜けモルディブへと向かう。翌朝起きると、マラッカ海峡の海面は驚くほど静かで鏡のようになっていた。そこにハンドウイルカが無数の群れをなして跳ねてきた。これまで太平洋を南下していながら、一度も出会うことのなかったイルカたちに乗客は歓喜し、その光景がまるで一日遅れのクリスマスプレゼントのように思えた。
航海すること4日間、にっぽん丸は次の寄港地モルディブへと到着した。点在するコバルトブルーの環礁や、一島一リゾートと言われるリゾートアイランドを見ながら進む入港風景に目を奪われる。本格的なリゾートの国に到着し、サンダルに履き替えビーチへと向かう乗客も多く見られた。
私も縦横無尽に泳ぐ魚たちを見たいと思い、潜水艦のツアーで30メートルの水深にすむ魚たちにアプローチした。珍しいアクティビティーに挑戦できるのもインド洋まで来たからこそというもの。さらに日本人には少々辛いと噂のモルディブ料理に挑戦。そうこうしているうちに停泊の2日間は過ぎていく。
モルディブを出港した夜、船内では一大イベントが予定されていた。大みそかということで、夜食に年越しそばが振る舞われ、深夜にはカウントダウンのイベント「ゆく年くる年」が開催。モルディブで乗船した歌手の庄野真代さんはじめ、この区間で乗船している全エンターテイナーが一曲、あるいは一演目ずつ披露するというスペシャルメドレーで2023年の幕が開けた。
さらにその翌日には、新年のお雑煮やおせち料理、お餅に初日の出、書き初めイベントなど、日本船でしか見られない伝統行事で新年を祝った。まさかモルディブの沖合でこのような年越しができるとは。目まぐるしく過ぎてゆくクルーズの中でホッとするひとときだった。
(上写真)シンガポールクルーズターミナル。奥はユニバーサル・スタジオ・シンガポール