■終日航海日こそ楽しい
午後には星空解説員のササキユウタ氏による講演も開催された。世界で星が美しく見えるというスポットの話に一同頷き、それにまつわるエピソードに笑う。ササキ氏によると街のネオンから遠く離れた洋上は、極上の星空観察のスポットだという。
「よく星が見えないと言いますが、まずは見ようと暗闇に目を慣らすことが大事。スマホなど光から目を遠ざけ、しばらくの間、暗いところで夜空を見上げていてください」とのアドバイスに、さっそく実践してみよう!と意気込む。洋上で得た知識がすぐ洋上で試せる……飛鳥Ⅱにはさまざまな仕掛けがあり、やっぱり終日航海日って楽しいなと再認識した。
そしてディナーの後は、吉村ちえこさんのショータイム。最近のヒットソングである藤井風の『まつり』が、いつしかおなじみの北島三郎さんの『まつり』になっている「まつり・メドレー」など、楽しいステージが続く。オリジナル曲であるという『私の中の少女』は、親しみやすいメロディと伸びやかな歌声が心響き、皆がじっくりと聞き入っていた。
吉村ちえこさん自身も今回が飛鳥Ⅱ初乗船。「船が出た瞬間、出たー!と興奮してしまいました」と笑う。飛鳥Ⅱ定番人気のハンバーガーも乗船初日に食べたそうで、「ハンバーガーのおいしさはもちろん、寄せられたフライドポテトが熱々でカリっとしていて絶品でした」。
吉村さんは言う。「飛鳥Ⅱのお客さまは皆、じっくり音楽を聴いてくださる印象です。船旅のゆったりした雰囲気もあるのでしょうね。いろいろなことを楽しもうとされている乗客の方に、むしろ私のほうが元気をもらいます」。
■昔ながらの温泉街別府で楽しむ
ツアーと自由行動のハイブリッド
たどり着いた最初の寄港地は別府。昔ながらの温泉街で、まずは半日の寄港地観光ツアーに参加して、定番の地獄めぐりにトライ。別府にある様々な奇観を呈する自然湧出の源泉スポットは「地獄」と呼ばれ、それぞれ海地獄、血の池地獄、鬼石坊主地獄など名付けられている。それらの地獄をバスでめぐるのが別府の定番観光だ。
午前のみの寄港地観光ツアーを終え、ランチは個人行動で、「地獄蒸し」を体験した。地熱を利用して、蒸気でさまざまな食材を蒸す、別府の名物料理だ。ランチスポットに行くすがらも、路地から蒸気が上がっていたりして、ここが地熱の高い地だと体感できる。
地獄蒸しを作るにはまず、ぎっしりと食材が詰められたせいろを、蒸気が上がる専用の調理場にそっと置く。それから15分ほどで出来上がるという、自然のエネルギーを利用した料理だ。出来上がった地獄蒸しは、それぞれの素材のうまみがギュッと濃縮されたうえ、温泉の風味をまとっているようで実に美味だった。
そこから足を延ばし、最近SNSで話題だというグローバルタワーへ。ここは建築家・磯崎新氏の設計によって1995年に建てられた展望タワーで、全面ガラス張りなのが特徴。行ってみると「すごい!」とつい声を上げたくなる絶景が広がっていた。
別府の街に浮かんだような展望台から、夏の空と街並みをゆったりと眺める。なんだか雲の上に乗っているような、ごきげんな気分だ。今回は午前は寄港地観光ツアー、午後は個人行動をチョイスしたが、「いいところどり」のようで正解だったな、と思いながらしばし景観を堪能した。